ED BISHOP and Michael Billington
FOREVER

ここではエド・ビショップ氏、マイケル・ビリントン氏のご冥福を祈りつつ、UFOについて簡単にご紹介しよう

■UFOとは

1980年、すでに人類は地球防衛組織SHADOを結成していた・・・このオープニングを生涯で一体何度見たであろう。Kの人生はUFOと供にあったと言っても過言ではない。

設定上1980年と言っても当時は1970年。今思うと1980年ははるかな過去となり、劇中の「未来っぽさ」は、かえってレトロな懐かしささえ感じられるまでに時代は変わった。オープニングの高速タイプライターで打ち出された各メカニック機能解説、「コスモルック」と呼ばれたムーンベース女子隊員のユニフォーム、やたら登場するオープンリールのテープレコーダー、コンピューターの稼動中イメージ描写でよく使われた、無意味な電飾の数々・・・どれもがまだ10歳そこそこのガキを熱中させるには十分すぎた。

今それらは、何らかの形で実現しているもの、まだ実現されていないもの、またあるいはすでに時代遅れとなってしまったもの、さまざまである。・・・まぁUFOが飛んでくる、あたりはさすがに超現実的で安易な発想だが、このシリーズが何十年もスタビリティーを持つ理由は、あまり現実的でない描写は控えられ、あくまで人間中心に構成されたシリアスSFであるという点にある。
超能力を持った魔法使いが空を飛んだり、大怪獣が東京は破壊しても子供は助ける、などといった映像のマジックや都合のいいストーリー展開で、物事の本質をカムフラージュしなかった。助からないものは助からない。出来ないことは出来ない、という冷たい現実を見る尺度を常に見るものに提示していたのだ。

■冷酷な司令官

その現実の冷たさを最も反映していたのが、ストレイカー司令官だったのだ。オープニングにもあるように彼は常に「沈着冷静なストレイカー最高司令官」であった。
ある隊員の妹が宇宙人に捕らえられ殺された話では、肉親にも事実を明かす事を許さず、死亡理由も捏造されたものだった。「地球の重さと一人の人間の命と、どちらが重いか」という命題に対する答えがここにはあった。UFOの存在は決して一般市民に知られてはならず、あくまで秘密裏に戦わなければならない。なぜなら、もし存在が知れ渡れば地球上が大混乱に陥るからだ。隊員の個人的な事情より地球のことを優先する、それがストレイカーの信条だった。

が、・・・子供のこととなるとちょっと違っていた。

■長男の事故死

ご多分に漏れず彼にも幸せな結婚生活の時期があった。しかしそれも長くは続かなかったのだ。
当時空軍大佐だったストレイカーは、その先10年かけて作られる未知の組織SHADOの司令官に任命されてしまう。これが彼の人生の大きな転機となった。仕事一点張りの多忙な日々、妻とのすれ違い。やがて妻は子供を身ごもり一見平和が戻ったかに見えたが、結局離婚してしまい、唯一の支えは、時々会うことを許された息子だけになってしまった。
そして久々の休日を長男と過ごすストレイカー、彼の表情には珍しく笑顔が見られた。しかし息子を家に送り届けた直後、息子は事故に遭ってしまう。瀕死の重症を負った息子を助けるためストレイカーは初めて任務を忘れる。

彼はアメリカにある新薬をSHADOの連絡便に乗せイギリスまで運ばせようとした。これで何もかもうまくいくはずだった。だがそこにUFOが来襲する。一緒に積んでいたシャドーモービルを途中で降ろすことになり、新薬はついに間に合わなくなったのだ。
「地球の重さと一人の人間の命と、どちらが重いか」という命題がここでも問われ、重々しい空気のままこのストーリーは終わった。


エド・ビショップ氏について(ファンダーソンより抜粋)
1932年6月11日銀行家の息子としてブルックリンに生誕。10年後一家はニューヨーク近郊に移り住み、エドは高校を卒業後軍隊のラジオ局等で働く。そしてボストン大学で演劇を専攻したのがキャリアの始まりである。1961年にキューブリックの映画に初出演。68年には「2001年宇宙の旅」に出演。その後「ゲイリー」アンダーソンに見出され、ITC作品の常連となった。
2005年6月8日他界。享年72歳。
因みに彼の実の息子も1988年に自動車事故で亡くなっている。


ストレイカー司令官、そしてフォスター大佐、謹んでご冥福をお祈りします。